王子様と秘密ごと
この気持ちは誰も知らない。
友達にだって言ってない。
もし私の気持ちが歩くんに知られたら迷惑だろうし、彼女が知ったらきっと傷つくだろうから。
早くこの感情が消えてしまうように必要最低限の会話は交わさないようにした。
視界に入れないようにした。
はやくはやく忘れられたらいいのにって。そうやって何度も願った。
「俺のこと好きなんだろ?」
「え…?」
…なのに。
日直の私は一人。放課後の教室に残り日誌を書いていた。
そう一人きりだと思ってた。
だけど違った。歩くんがいた。
胸がどきどきする。二人きりになったのは初めてだ。
だから頭がおかしくなったんだと思った。最初は。
好きな人が近くにいて、しかも少女漫画でよく出てくるようなシチュエーションだったから耳がおかしくなったんだと思った。
「キスしようか?」
私の目の前の席につき、
彼は笑顔でそういった。