王子様と秘密ごと
近づく距離と体育祭




「な…なんてことしてくれたんですかー…!!!!」

涙目で叫ぶ私を尻目にちゅるちゅるとイチゴオレを飲む波岡。

もう"くん"すらつけたくない。本人にはいえないけどさ。



「何って…、事実じゃん」


「いや違います…!なんかいろいろ方向性間違ってます…!」



そう。間違っている。

黙ってるって約束で彼氏彼女になるっていう意味の分からない同盟を組まされたというのに…。

なんか間違ったことで私だけ…私だけ目立っている始末。



この引き金を引いた歩くんには何の問題もない。

むしろ部外者的な感じになっている。被害者は私、…なのに。




波岡くん自身は楽しんでいる。全力で。

彼には確実に利益がない。



むしろ"趣味悪いね"とか、

"脅されてるのかな"とか

そんな風に言われるに決まってる。



なのにその状況をどうして楽しんでいるのだろう。

自分がどう思われるとかよりも目先の楽しみのために生きているようにしか見えない。



もう放置してくれたらいいのに…。

と吐きそうになっている私とイチゴオレ男がいるのは家庭科室。



波岡(くん)が見つけた誰にも邪魔されない場所、らしい。



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