王子様と秘密ごと
その瞬間パッと体を離した歩くん。
ようやく歩くんから解放された私は音のなった方を勢いよく見る。
「…撮っちゃった」
前のドアの方。
ドアの淵に重心を預けだるそうにしている一人の男の人。
ケータイを片手に綺麗な唇に弧を描く彼はいつものみんなの中心にいるときの笑顔とは正反対。ただ怖いと思った。
背筋でタラリと流れる冷や汗。
ゾクッとして卒倒しそうになった。
「…天音」
歩くんがそう呟く。
ガタガタと震える体。
撮られた、写真、撮られた。
その言葉が脳内でぐるぐると流れる。
怖くてたまらない。苦しくてたまらない。
「なんのつもりだよ」