∇TAB00〜その先にあるもの〜∇
「ふふっ.
否定しないところも
素直でいいわ.」
「…」
゙でもね゙
そう言って理香子さんは
身を乗り出した.
「私はあなたのことが
好きなの.
これ以上ないってくらいにね.」
「いやでも
旦那様が…」
「旦那はいないわ.」
「…え?」
「子供が生まれてすぐ
亡くなったの.
だから全くやましくはないわ.
…ねぇ、どう?
試しでもいいの.
私と付き合ってみない?」
…試し.
その響きはなぜか
俺を安心させた.
…まだこの人のことを
知れる.
…自分の気持ちが
愛なのか
はっきりと
分かるかもしれないから.
だから俺はこう告げた.
「…よろしくお願いします」
と、ただ一言だけ.
…試しでなんて
軽々しく考えなければ
俺はもっと
楽に生きれただろうか.