∇TAB00〜その先にあるもの〜∇
゙ドクン゙
なぜだろう
俺の心臓が
高く鳴り響くのは.
「…あぁ.」
それしか答えられず
立ち尽くす俺のまえから
栞は
立ち去った.
「…っ.」
胸が異様に苦しい.
…理香子さんのときとは
また違うくるしさだ.
「…考えるな.
相手はまだガキだぞ?」
しっかり自分に
言い聞かせたつもりで
車にのりこむ.
…あの事故から
今ようやく
俺は幸せになれているんだ.
大切にしたい人も
大切にしてくれる人もいて
大好きな仕事ができて
たくさんの将来がある生徒達に出会えて.
…エンジンをいれ
車を発進させる.
…ふと左を見ると
栞が反対方向へ
歩いているところだった.
…なんだ、家まで
ちゃんと送ればよかったな.
そう思ったとき.
「…嘘だろ.」
栞がはいっていった家は
理香子さんの家だった.