本当の僕を愛して?


『到着しましたぁー』

兄さんは崖の上の木に手を当てた。

「…この木って…」

『土砂崩れがあったのにまだ残ってるなんて…しぶとい木だよな…』

兄さんは寂しそうな顔をすると口を開いた。

『…埜択…。架世(かよ)ん事、覚えてるか…??』


「…架世ちゃんだろ??」


園田架世。
13歳の頃、この秘密基地に居た仲間。


『架世は…俺のせいで死んだ。』


「…兄さん??」


『架世と俺はあの日イケナイコトをしたんだ…その時に架世に…』


まさか━━━…


『子供ができたんだ…』


「!?」


『架世は誰にも話せず、俺にさえもその事を黙っていた。』


兄さんは少し黙ると
暮れていく空を見上げた。

『架世は本当に悩んだんだよな…
だからこの木に自ら…』


「それって…」


『あぁ…俺が架世の人生を狂わせたんだ。だから俺は責任とらなきゃいけなかったんだ…』


『俺は誰とも付き合わない…』


兄さんがそんな事を抱えていたなんて…

「知らなかった…」

『あぁ、お前に話したのが一番最初だ。心の整理がなかなかできなくてな…』


「兄さん…」


『お前になら話せるよ…お前は俺のたった一人の家族なのだから…』

親は離婚。
父に引き取られた僕等だったが父は2年くらい前に他界。
今は僕等だけ。


「ごめん…兄さん…僕…」

兄さんの方に振り向いた瞬間だった…


突然後ろに引かれる。
空が離れてゆく…
兄さんが必死に手を伸ばしている…


『埜択━━━━━!?』



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