カサブタ。
「けっこう遠慮無しに見えちゃうものなのね。」
そう答えたら、
彼は微かに緩んでいた頬をさらに緩めた。
「君が開けっ広げ過ぎなんだよ。」
その言い方があんまり甘ったるくて、
少し驚いた。
「他の人間には鉄壁の守りなのに、そんな無防備にされるとちょっと変に期待しちゃうよね。」
クスクスと笑いながら言った彼の魂に、
強すぎて頭痛を伴うほどの安心感みたいなものと、
それからほんの少しの欲が見えて、
この人は凄く上手に自分を隠しているんだってわかった。
魂までコントロールするなんて凄いと思う。
私には出来ない。
証拠に、
この人の前では、
私の壁は脆くも崩れさっているらしい。
「お互い隠し事が出来ない男女がうまくいくとは思えない。」
言ったら、彼は首を傾げた。
「隠し事なんて、ないほうがいいじゃないか。」
彼はそう言ったけれど、
それはただの理想論で、
隠し事があるからうまくいくんだと私は思っている。
隠し事こそ、
男女の間に横たわる甘い甘い緩衝材だと思う。
知らないほうがいい事のほうが、
知るべき事より多いのは確かだ。