カサブタ。
「はい。はい、わかりました。」
彼の表情は変わらない。
ポーカーフェイスの奥に、
その不機嫌は覆い隠されている。
私は空を見上げた。
自分まで不機嫌になってしまっている事に気付いたから。
その不機嫌に煽られて、
私までいらついても仕方がない。
さっきまで刺すように降り注いでいた陽射しは西の空に傾いて、
やわらかな西日に姿を変えていた。
空はまだ青くて、
白くて大きな夏の雲がもくもくと漂っていた。
そういえば、
どれくらいの時間がたったのだろう。
こんな風に、時間を忘れたのは久しぶりだった。
それを楽しいと思うだなんて、
少しどうかしてるかもしれない。
この人の強い魂に長時間触れすぎてしまったのだろうか。
あまり強すぎる刺激に晒され続けると、
感覚は麻痺してくる。
そういう事なのだと思う。