カサブタ。
彼を車椅子に乗せて、
やたらとだだっ広い病院の中庭に出た。
雨が降っているから、
屋根のついた通路をゆっくりと歩いていく。
むっと暑くて、
吸い込んだ空気で肺にカビでも生えそうだと思った。
「心を読んでいるわけじゃないのに、君の見ているものはかなり正確だよね。」
彼はそう言って私を見上げた。
立ち止まって彼の横に並ぶ。
「そういう環境だったからじゃない?」
モルモットだった私は、
両親の顔色ばかり見ていた。
魂の色と、
顔色と、
表面の表情は決して一致しなくて。
気味が悪かった。
あの狂った二人より、
複雑な精神構造をした人間なんてそうそういるものではない。