カサブタ。

「どうぞ。」

彼は、
機嫌良く助手席のドアを開けた。


私の手から紙袋が奪われるのを、
私は呆然と見ていた。


松葉杖なのに、

こんなに身軽な人もめずらしい。


「言ったでしょ?よくある事なんだよ。」

彼はそう言って、
リアシートに松葉杖と荷物を放り込むと、
運転席に座った。


「運転する気?」


思わず聞いたら、
彼はもちろんと頷いた。


「運転するのに左足は関係ない。」

まぁ、それもそうだ。


どうこう言っても、
自分が運転出来ないのだから仕方ないと思い直した私は、
おとなしく助手席に座った。



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