カサブタ。

「女心は複雑だね。」

彼は言った。


全然意味がわからない。


「彼は君の消毒液だろ?色々感じて傷付いた君の魂を浄化する。」


そこまで聞いて、やっと言わんとしている事がわかってきた。


「僕は彼と1セットでもかまわないよ。」



ほとんど表情を変えずに、

さらりとそう言ってのけたこの人はきっと今、

嘘をついた。



ポーカーフェイスで隠したって、
魂の揺らめきは隠せない。


私には見えるから。


「二股を推奨するわけ?」

だから、あえてそう聞いた。


彼は表情を変えずに答えた。



「いつか、選んでくれればいいよ。」



それでもまだ、
そうやって嘘をつくのならと、
私は言った。



あえて、可愛くない言葉を選んで。


だって彼にはもう、このどうにも出来ない気持ちは伝わっているだろうから。



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