王子と秘密の甘い時間。


頭がガンガンする。


鈍器で殴られたような感覚……。


「……ッ、」


だめ、泣いちゃだめ。


私は必死で涙をこらえる。


泣くのは、ここを出てから。

ひとりしかいない教室で泣くの。


私は廊下をとぼとぼ歩く。


すれ違う一般の人たちは、みんな楽しそうに笑っている。


きっと……、


こんな楽しい空間の中、悲しくて泣きそうな人は、私ぐらいだと思う。


「佐野さん。」


名前を呼ばれた気がして振り向いた。


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