王子と秘密の甘い時間。
……ぺたん。
私はその場にしゃがみこんだ。
私はもう、慧斗のモノじゃなくなるんだ。
強引だけど優しいキスも、
私を抱き締める逞しい腕も、
私を呼ぶ愛しい声も、
私からなくなる。
若林さんに強引だけど優しいキスをして、
若林さんを逞しい腕で抱き締めて、
愛しい声は若林さんの名前を呼ぶ。
そんなの、嫌だ。
そうは思っても、
変わるわけない現実。
私は、ふらふらと、婚約者の元へ向かった。