海までの距離
ハーメルンの役に立てるように。


「あのさ…海影と連絡取ってる?」

「え…」


一瞬怯んだものの、それはいつか聞かれるだろうと予測ができていた質問だった。
恐らく有磨さんも、いつか切り出そうとタイミングを見計らっていたんだ。


「あ、海影から直接何か聞いてるとかじゃないんだけどさ!前に、真耶ちゃんが海影と連絡先交換したって言ってたから…」


それはきっと本当。
海影さんは、有磨さんに何も言っていない。
有磨さんと海影さん、双方を信じられる。


「ちょこちょこ、メールしています」


これもまた、準備していた答えだった。
嘘ではないが、真実にあらず。
会っていますとは、どうしても言いにくかった。
有磨さんは私の返答に「そっか」と微笑んだ後、悲しそうに笑って、


「嘘なの」


そう、小声で言った。


「嘘?」


有磨さんの声が僅かに震えていたのは、私の気のせいだろうか。

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