海までの距離
海影さんは自分のバンドを犠牲にして、有磨さんを守った。
その人と共謀して、有磨さんを捨てることはできたのに、海影さんはそれをしなかった。
海影さんのことだから、“しなかった”のではなくて、“できなかった”という方が正しいのかもしれない。
名の知れたバンドのスキャンダル。
そんな経緯でLOTUSは解散したなど、誰が思うだろう。
もしそれが知れていたら、有磨さんは間違いなく酷い目に遭う。
もし私がLOTUSの大ファンで有磨さんと赤の他人だったら、私だってどんなことを思っていたか分からない。
だけど…もしかしたら、そんな最低男がいるバンドなんて失くなってしまった方が海影さんの為に良かったのかもしれないと、私は思う。


「私は海影に恨まれてもおかしくないのにね、海影は『馬鹿な男に引っ掛かって人生損してんじゃねぇよ。そんなのは馬鹿な女だけで十分だ』って言って頭を撫でてくれたんだ。『あんたは本来そんな馬鹿じゃないはずだ』って…」
< 134 / 201 >

この作品をシェア

pagetop