海までの距離
私達がさっきまでいた空間――ライブハウスの中には、200人近くの女の子がいる。
私より年下の子、私より年上のお姉さん。様々に。
その中には、「ステージを飾るバンドマンと、どんな関係でもいいから繋がりたい」と考える女の子だって、少なくはないだろう。
本当に大好きなら、そう思って当然だ。
はたまた、それをステイタスとするため。
知名度と人気のある人間を、独り占めしたいという独占欲と優越感を満たしたいという欲求に駆られて。
そういう子達がごまんといるんだ。
ここだけじゃない、全国の至るところに。
そのリスクなど、微塵も考えずに。


「海影に、LOTUSの他のメンバーに、ファンの子に、産まれてきたかもしれない自分の子に、どんなに泣いて謝っても、贖罪は叶わない」

「そんなこと…」

「だって、そうでしょ?」


有磨さんを庇おうと発した言葉は、有磨さんによって制されてしまった。
それを覆すだけの言葉は、私に見つからない。
もしも海影さんなら、こんな時、有磨さんに何と言うだろう。
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