海までの距離



「じゃ、26日はそのままライブハウスに向かえばいいんですね?」

『うん。受付で真耶の名前言えばいいから。それで…ああそうそう、お前、苗字何だっけ?』

「久住です」

『オーケー。“久住真耶”でパス出すわ。会場入ったら、後ろの方に関係者席があるから、そこに入るの。入ったら、あとは自由にライブレポート書いちゃって』


海影さんの説明も随分フランクで、ちょっと笑える。
でも、何にも知らない私が困らないようにきちんと説明してくれているのがよく分かる。
こんな大仕事を即決で引き受けてしまって不安はあるけど、やってみなくちゃ。


「楽しみにしてます。私、頑張る!」

『俺も頑張る!』

「ちょっと、海影さんっ」


私の口調を真似る海影さんを照れながら諌める。


『じゃまたな。気をつけて帰れよ』

「海影さんこそ」

『俺はこれからミチと打ち合わせ』

「…いってらっしゃい」


タイミング良く目の前に停まったバスに乗りながら、私は電話を切った。















翌朝、カーテンを開けるとそこは一面の銀世界だった。
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