海までの距離
そうして現れた4人の姿を目にし、緊張感が高まった。
初めて彼らのステージを観た時の沸き立つような衝動が、今もなお私の中に健在している。
奏でられる音、その甘く気怠い声に、心が震える。
どこからか、「私なら絶対にいいライブレポートが書ける」という自信が溢れてきていた。
だって、大好きだから。














「ライブが終わったら楽屋を尋ねてこい」という海影さんの指示に従い、お客さんが半分くらい会場を出た後、私は楽屋に向かった。
このライブハウスの楽屋の場所なんて知らない私は、派手なお姉さん3人組が「ミチに会っていこう」と会話しているのを聞き逃さず(やっぱりミチさんの知り合いか!)、その3人組の後をつけた。
ロビーの隅、遮断された蛇腹カーテンの向こうに何の躊躇いもなく入っていく3人に、張り裂けそうな胸の鼓動と闘いながら私も意を決してそのカーテンに手を掛ける。
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