海までの距離
大方ライさんから聞いたんだろうな。


「有難うございます」


こんな素敵な人に「おめでとう」と言われたことが、なんだか照れ臭い。
でも、素直に嬉しいのは事実。
だけど、ライさんはどうやら肝心なことは話してなかったようで、


「ねぇねぇ、今更で申し訳ないんだけどさ、お名前なんて言うの?」


天真爛漫に、お姉さんはそう聞いてきた。
私が新潟在住だと知っていたから、てっきり私のことはある程度話していたのかと思ってた。
ちょっと、びっくり。


「あっ…えっと、真耶です」

「私は桜(さくら)。ライと凪とは同じ高校で、今はK大の経済学部に通ってるよ。宜しくね」

「宜しくお願いします……って、先輩じゃないですか!」

「えへへー」


本当にライさんは肝心なことは話さない。桜さんにも私にも。


「寄ってくよね、楽屋」

「はい、海影さんが来いって」


一応周りのファンの子を気にして、小声で話す私達。
それでもなんだか目立ってしまうのは、桜さんがいい意味でここには場違いだからじゃないかと私は思う。
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