海までの距離
「海影さん、真耶ちゃんのこと溺愛してるってライが言ってたなあ」
「そんなこと…!」
「ほらほら、行こう」
桜さんの言葉への否定を遮って、桜さんはカーテンの向こうへ滑り込む。
ライさんは一体何を吹き込んでいるんだ!
熱く沸騰しそうな顔を隠す暇もなく、桜さんに続かざるを得ない私。
カーテンを開けてすぐに目が合ったのは、ライさんだった。
「おっ、真耶ちゃん!」
大学でお世話になった時の落ち着いた髪の色はどこへやら、ライさんの髪はまたシルバーアッシュに。
ステージメイクのまま、ステージ衣装のままだから、今のライさんはとても派手。
到底桜さんの彼氏には見えない。
「お疲れ様でした!」
この前ライさんとは沢山話したから、今こうして目の前にライさんが居ても緊張せずに話せる。
だけども。
「あっ、こないだの子じゃん」
「ほんとだ、女子高生!」
ライさんの後ろで派手なお姉さん達と話していた凪さんとミチさんに私の存在を気付かれ、硬直。