海までの距離
萩原 由香里(ゆかり)。横書きの名刺の上に乗る名前の横には、“編集長”の肩書き。
嘘…まさか、そんな…。
「久住さん、こちら萩原さん。ディレイの編集長さんね」
初めて海影さんに苗字を呼ばれて、私は今、とんでもない状況下にいるんじゃないかと漸く気付かされた。
「あ、私、名刺持ってなくて…」
「いいのよ。あなたが高校生だってことは、海影君から聞いているから」
にっこりと笑って、萩原さんはそう言った。
背伸びをした私の服装、態度を一瞬にして打ち消された一言。
なんだ、もうバレちゃってたか…。
その途端、ふわっと気持ちが軽くなるのを感じた。
“私はまだ高校生だし”…私は自分自身に甘んじていたかもしれない。
海影さんは、10代の頃からベースを抱えて全国を走り回っていたというのに。
それに比べて、自分はなんて情けない。
嘘…まさか、そんな…。
「久住さん、こちら萩原さん。ディレイの編集長さんね」
初めて海影さんに苗字を呼ばれて、私は今、とんでもない状況下にいるんじゃないかと漸く気付かされた。
「あ、私、名刺持ってなくて…」
「いいのよ。あなたが高校生だってことは、海影君から聞いているから」
にっこりと笑って、萩原さんはそう言った。
背伸びをした私の服装、態度を一瞬にして打ち消された一言。
なんだ、もうバレちゃってたか…。
その途端、ふわっと気持ちが軽くなるのを感じた。
“私はまだ高校生だし”…私は自分自身に甘んじていたかもしれない。
海影さんは、10代の頃からベースを抱えて全国を走り回っていたというのに。
それに比べて、自分はなんて情けない。