海までの距離
萩原さんは少しふくよかで、それが萩原さんの柔らかな雰囲気を作っているようだ。


「で、以前久住さんに書いて貰ったライブレポートがあるじゃん?あれ、実は事前に萩原さんに見て貰ってたのよ」

「え!?」

「ごめんな、勝手な真似をして」


海影さんのカミングアウトに、私が驚かない訳もなく。
そりゃあ、いずれは見られるのだから、恐れることは何もないけれども。


「勿論、俺は久住さんに是非ハーメルンのライターをと考えていたけど、ディレイ側にもジャッジして貰う必要があったからね」


おっしゃる通り。
だけど、私がスムーズに仕事ができるように、海影さんは根回しして手配してくれていた。


「みずみずしい文章でした。ファンの子の目線で書かれていたわね。関係者席からは見えない景色を、久住さんは見ていた。うちにはない、新鮮なレポートだったわ。高校生だと聞いてちょっと心配はしたけど、流石、海影君が連れてきた子ね。杞憂だったみたい」


また耳にした、「海影君なら」という言葉。
初めて海影さんに会った時も、凪さんが言っていた。「海影さんなら安心」だと。
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