海までの距離
自分の文章を、ディレイの人が認めてくれた。
そして、海影さんには感謝してもしきれない。
ほんの少し前までのらりくらりと毎日を生きてきた女子高生のそれを変えてくれ、光を与えてくれた。


「萩原さんには『ちょっといいライターがいるから紹介します』としか言ってなかったんだけどなあ。俺も、こんなにとんとん話が進むとは思わなかった」


このことは海影さんにとっても予想外だったようだ。
海影さんもずっと、にこにこしている。


「海影さん、有難うございます!」

「お前、さっきからそれしか言ってないじゃん」

「だって…!」


大して面白いことでもないのに、私と海影さんは声を上げて笑った。
私のことなのに、まるで海影さん自身のことのように、海影さんは嬉しそうにしてくれている。
そんな私達の様子は楽屋にまで伝わってしまったのか、


「海影ー、そろそろ撤収するよ!」


ひょっこり現れたミチさん。
私達が子供みたいにきゃっきゃとはしゃぐ様子を見て、呆れ返った顔をしている。


「…なーんか、凄く楽しそうなんですけど?」


ミチさんが唇を尖らす。
そんなミチさんさえも巻き込んで、海影さんはミチさんの華奢な背中をこれまたばしばし叩いた。


「おう、今日は最高の日だ!」
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