海までの距離
名残惜しい気持ちで立ち上がると、海影さんは「送るよ」と同じように腰を上げた。


「いやっ、そんな滅相もない!」


咄嗟に首を横に振ったものの、一緒に来て欲しかった。
1分1秒でも長く、海影さんと一緒に居たい。


「何言ってんだ、俺が東京に呼んだのに俺が送らなくてどうする」


頑として引かない海影さんに、私はそれ以上海影さんを拒めなかった。


「海影君に送って貰いなよ、真耶ちゃん」


海影さんの隣にいたライさんと、目が合った。
何もかも見透かしたような、目だった。
















「うわっ、外はさみぃなー」


私よりもずっともこもこのダウンを羽織っているのに、寒いとはこれ如何に。
海影さんは細くて脂肪がないから、人より寒がりなのかもしれない。うん。


「新潟はもっと寒いんだろうな…」


居酒屋のビルを背に、海影さんが空を見つめて歩き出した。
私もつられて上を向いたけど、その視界には端から端までちかちかしたビルのネオンしか映らない。
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