海までの距離
出発
明け方、新潟に到着。
私はその日、午後までたっぷり眠ると、すぐに机に向かった。
こうして机に向かうのなんて、久しぶり。
大学から与えられた課題はリビングでやっていたし、高校の宿題は友達に交じって放課後の図書室で済ませていた。
お父さんにもお母さんにも、自分がライターとして上京したということは言っていない。
誌面に載ったら、それを見せて驚かせてやるつもりだった。
娘がこんな仕事をしていたなんて知ったら、どんな顔をするだろう。
ライブの内容については、自分でもびっくりするくらい書くことがあった。
海影さんに会えたことの嬉しさが滲み出ているのが、恥ずかしながら自分でもよく分かる。
膨らましすぎて字数をオーバーしてしまい、何度も添削を繰り返す。
本当は余すことなく使って欲しいんだけど、仕事となればそうもいかない。
自分がホームページで好き勝手で書いているそれとは違うんだから。
翌日のうちに海影さんからメールがあり、「昨日は有難う」「無事に着いたか?」という内容の他、萩原さんに一度電話するようにとのこと。
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