海までの距離
「海影さんだと思ってたぁ…」
『ま、裏方の仕事はほぼ全部俺がやってるから』
「縁の下の力持ちですね!」
『そんないいもんじゃないけど』
海影さんが苦笑いを零す。
「一人で全部こなすのって、大変じゃないですか?」
『大変っちゃあ大変だけど…できる奴や得意な奴がやればいいじゃん?んで、俺がいろんな意味で一番適任者だったからね』
自ら“適任者”と言えど、それを全く鼻にかける様子がない。
流石だな…。
『…っと。明日も俺、早いんだった』
「あっ、すみません!長話しちゃって」
海影さんとの電話は、つい長話・無駄話をしてしまう。
本当は今日だって、萩原さんのことを報告するだけのつもりで電話したのに。
『いいのいいの。じゃ、電話切るよ』
「お休みなさい、海影さん」
『お休み』