海までの距離



『そうだよ、確か』

「私、その日卒業式なんですよ」

『おー、偶然!んじゃ、真耶の最後の制服姿を拝みに行こうかな』

「え!?」


咄嗟に変えた話題に、まさかの言葉。
それって、私に会ってくれるってこと?


『…って、実際はそんな時間ないんだけど』


あはは、と海影さんが笑う。
馬鹿。私の馬鹿。
何を期待しちゃったんだ。

「じゃ、じゃあ私が制服のままハーメルンのライブに行きます!」


そうだ、どの道ハーメルンが新潟に来るならライブに行かないなんて有り得ない。
今まで制服でライブに行っていたんだし、卒業式の後にライブハウスに直行すればいい。


『そりゃ嬉しいけど、でも、卒業式の日ってクラスの子と遊んだりしねぇの?』

「うっ…」


思い出した。
卒業式の後、クラスの皆で駅前のカラオケで打ち上げしようって、もうずっと前から企画されていたんだっけ。
それをすっぽかす訳にはいかない。すっぽかしたくない。
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