海までの距離
私の驚愕をよそに、海影は煙草を掴んで立ち上がった。


「大丈夫だって。俺、酒飲んでないし。自転車なら駅前に停めて、明日にでも取りに来たら?新潟なら東京と違ってすぐに撤去されることもないでしょ」


海影の提案に「いや、でも…」なんて口ごもる私。
有磨さんにヘルプの目配せをするも、


「それがいいかもね。海影さん、お願いできますか?」


有磨さんは海影にさらりと同意。
有磨さんは久しぶりの海影との再会なのに、なんで私なんかの為に!


「海影君なら安心だよ。お堅いことで有名だし、真っ直ぐ送り届けてくれるよ」


私達のやりとりに気づいた凪も言葉を挟む。
海影も凪も、なんだか的外れな発言を…。


「そういうことで、ちょっと行ってくるわ。ほれ、行くぞ女子高生。ミチが帰ってきたらまた捕まる」


さっさと立てと言わんばかりに、海影は私の背中をぽんぽんと叩いた。







海影に促され、私の愛車は私服に着替えた時TSUTAYAに停めたままにして二人でワゴン車に乗り込む。
恐れ多くも、私は助手席。
そんなに大きくない車内は、煙草の匂いが篭っている。
そんな匂いさえも、私の胸の高陽を助長させた。
この車でハーメルンは全国を行脚してるのかあ。


「よっしゃ、出発!シートベルト締めろよー」
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