海までの距離
とにかく、私は学校を後にすることにした。
取り敢えず帰ろう、と。
殆ど会話がないまま、咲は少し前に帰ってしまった。
寂しいものだが、受験生同士が図書室にいる時なんて、こんなもんだ。
蝉時雨の斜陽の中、校門を出てTSUTAYAまで一人で歩く。
肌寒いくらいにクーラーが聞いていた図書室に長時間篭っていたせいで、外気の蒸し暑さがきつい。
道すがら、私は携帯のメールの新規作成画面を開いた。
件名には「昨日は有難うございました」。
本文は…どうしよう?
5歩前に進んで、私は再び携帯の上で指を動かした。


「真耶です。
昨夜は送って下さって有難うございました!
とっても楽しいライブでしたし、楽しい打ち上げでした。
頑張ってライブレポート書いちゃいました(笑)
海影さんはもう仙台に着きましたか?」


年上で、まだ馴染みのない海影に絵文字やら顔文字やら織り交ぜたメールを送るのは、なんだか失礼なのではと、打ち出した文面はごくシンプル。
…いや、逆に女子高生らしい若さと可愛らしさがない気も…。
最後を疑問文にして、海影が返信しやすいように…なんて考えてる自分があざといな。
まあいいや、取り敢えず送信しよう。
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