From Y
「あ、ぶらんこ!」
 ねこは思わず目を輝かせた。バイパスの下にある公園が目に入ったのだ。
「ぶ、ぶらんこって……」
「幾つになっても好きなものは好きなんです」
 吹き出した羊の声で微妙にきまり悪くなったが、何しろ4年ぶりのぶらんこである。ぶらんこが大好きなねこは、羊をほったらかして公園に駆け込んだ。
「なんか、意外」
 後から公園に入ってきた羊が、おかしそうに笑う。
「もっと大人っぽいと思ってた」
 キィ、と腰掛けたぶらんこを小さく揺らして、ねこは訊いた。
「がっかりしました?」
 羊がねこの隣のぶらんこに腰を下ろした。
「いや、逆に楽しい」
 良かった、と心のどこかで安堵する自分の声がして、ねこはやっぱり羊が好きなのだと思い知った。
「小さい頃って、あほみたいなことしませんでした? 今だったら信じないことを、何の疑いもなく信じてたりだとか」
「うん、幽霊はいると思ってた。つーかいきなり話変わったな」
 羊の突っ込みについては敢えてスルー。
「小学校の裏に、それはそれは不気味な神社があるんですけど、私は何故かそこがお気に入りで、毎日お供え物をしに行ってました」
「お供えって……まさか……」
「給食のパンと牛乳ですよ」
「……なんだ。俺はまた、てっきり虫の死骸でも供えてたのかと」
 明らかにふざけた口調の羊に目を戻すと、赤かった羊の顔はすっかり元通りになっていた。
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