From Y
「羊さん」
「ここにいるよ」
例えば、私が不安になって、羊さんの名前を呼んだとき。なんだ? とか無粋な受け答えをしないところも大好きです。
お医者さんに「保って四年だけど、いつ死ぬのかわからない」と言われて、生きるのがつまらなくなりました。「どうせ死ぬんだ」それを旗印に、投げやりに毎日を過ごすようになっていました。でも、羊さんを好きになってからは、もっと生きていたいと思えました。羊さんのいる世界で目覚めたいって思いました。
「将来の夢」というのも一度は捨てましたが、新しい夢ができました。羊さんが眠れないときは、一緒に徹夜できる自分になりたいです。
羊さんに安眠が訪れますように。
書き終えて時計を見ると、まだ七時半にもなっていなかった。それでも、瞼は開けていられないくらいに重たい。
あぁもうだめ、眠たい。限界。
ねこは目を閉じた。
「……起きろー。朝だぞー」
「ん……?」
毎朝、恋人をこの目に映せる。それはなんて幸せなことなんだろう。
「おはよ」
羊の朝は早い。明け方には起きて、時間をかけてねこを起こしてくれる。
「おはようございます……」
羊に抱えられるようにしてテーブルにつき、目覚ましの薬を飲ませてもらう。
「ゆうべはよく眠れました?」
ねこの嗜眠を緩和する薬が生まれた。そんな時代だ。
「おかげさまで」
不眠の症状が治まってきた羊と暮らし始めて、二ヶ月が経った。
「今日は休みだけど、どうしたい?」
「お散歩したいです」
「じゃあ、支度したら行こうか」
残り時間が少ない二人は、それぞれにできる仕事をしながら穏やかに生活している。
シンクで洗い物をしている羊の背中に、ねこは額をこつんと当てた。
「どした?」
「幸せだなぁ、と思いまして」
羊の笑う気配がした。
願わくは、明日も羊さんのいる朝に目覚めんことを。
「ここにいるよ」
例えば、私が不安になって、羊さんの名前を呼んだとき。なんだ? とか無粋な受け答えをしないところも大好きです。
お医者さんに「保って四年だけど、いつ死ぬのかわからない」と言われて、生きるのがつまらなくなりました。「どうせ死ぬんだ」それを旗印に、投げやりに毎日を過ごすようになっていました。でも、羊さんを好きになってからは、もっと生きていたいと思えました。羊さんのいる世界で目覚めたいって思いました。
「将来の夢」というのも一度は捨てましたが、新しい夢ができました。羊さんが眠れないときは、一緒に徹夜できる自分になりたいです。
羊さんに安眠が訪れますように。
書き終えて時計を見ると、まだ七時半にもなっていなかった。それでも、瞼は開けていられないくらいに重たい。
あぁもうだめ、眠たい。限界。
ねこは目を閉じた。
「……起きろー。朝だぞー」
「ん……?」
毎朝、恋人をこの目に映せる。それはなんて幸せなことなんだろう。
「おはよ」
羊の朝は早い。明け方には起きて、時間をかけてねこを起こしてくれる。
「おはようございます……」
羊に抱えられるようにしてテーブルにつき、目覚ましの薬を飲ませてもらう。
「ゆうべはよく眠れました?」
ねこの嗜眠を緩和する薬が生まれた。そんな時代だ。
「おかげさまで」
不眠の症状が治まってきた羊と暮らし始めて、二ヶ月が経った。
「今日は休みだけど、どうしたい?」
「お散歩したいです」
「じゃあ、支度したら行こうか」
残り時間が少ない二人は、それぞれにできる仕事をしながら穏やかに生活している。
シンクで洗い物をしている羊の背中に、ねこは額をこつんと当てた。
「どした?」
「幸せだなぁ、と思いまして」
羊の笑う気配がした。
願わくは、明日も羊さんのいる朝に目覚めんことを。