From Y
【まさか、歌一曲であんなに泣くなんて思わなかった。
中学のときにあの歌聴きながらよく泣いてたから
条件反射もあるんだろうけど。
……こんなに苦しいなら、
あの人を好きな気持ちなんて、もういらない】
 由輔だけに話した、柚の本音だった。

 その後、彼氏から【俺は柚と別れたくない。柚のことホントに好きだ。これからいっぱい遊びに行こう。考え直してくれ】とメールが来た。初めて彼氏から送ってきたメールだった。

***

 中学の同級生だった二人目の彼氏は柚にベタ惚れ状態で、正直なところ柚は若干引き気味だった。
 季節は一学期の期末テスト付近。相変わらず「あんたら付き合ってんの?」レベルで仲の良い由輔と話しているところを彼氏の友人に目撃され、隣の男子高に通う彼氏がある日いきなり泣いた。
 文化祭で自分が泣いたとき、由輔もこのくらいびっくりしたのかなァ……などと物思いに耽りながら彼氏に事情を聞くと、由輔との関係を泣きながら問い詰められた。
「え、なに? ……あんたの友達が? うちの高校で? 私が男子と仲良くしてるのを見た? あんたより背が高くて。頭良さそうな感じで」
 みっともないほどしゃくりあげている彼氏の話を、柚は何とか把握&理解した。
「そいつ誰って? ……友達ですがなにか?」
 あんたも中学の時、彼氏いる私と喋ってたでしょ?
 そう畳みかけると、彼氏は目元を拭いながら首を横に振った。
「だって俺、中学ン時からお前のこと好きだったもん。そんで、いまお前と付き合ってんだもん。そいつも同じかもしんないんだもん」
「『そいつ』は、たとえ私のことを好きだとしても、私を困らせることはしないから」
 そもそも話の前提が色々と失礼じゃないだろうか。そういう配慮のない彼氏には常識もなく、夜中にメールを送ってきたり長電話をおっぱじめたり、柚の安眠を妨げまくりだったので夏休みの間に別れた。

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