ぼくらのハーモニー Ⅲ
♪第一楽章 夏に向かって
夏だった。
汗が体中から湧き出てきて今年もまた気温の記録を越しそうな勢いだ。
「暑い・・・。」
終業式、クーラーはまったくと言っていいほどきかないこのホールで誰もがこの言葉をつぶやきながら、校長先生の話を聞く。
「愛華~まだかな?」
遠い愛華に口パクで尋ねているのは 南方柚希 。
彼女は吹奏楽部の副部長で、管楽器代表だ。
部長が打楽器で管楽器の事があまりわからないのでほとんど技術の指摘は柚希がしている。
「まだまだ。」
×サインを出しながら呆れ顔をしているのは、峰 愛華 。
吹奏楽部でホルンを担当していて、部内でも実力のある生徒だった。
「オイ、静かにしろって。」
柚希に言っているのは、原優太。
学級委員で、夏から生徒会に入る。
ちょうど今日で学級委員が交代する。
そして彼は吹奏楽部部長だ。
打楽器を担当している。
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