ぼくらのハーモニー Ⅲ

俺は、楽譜に目をやった。

『music~奏でるのはじぶんたち~』

この曲・・・

俺の家を出て行ったお姉ちゃんが作った曲だ・・・

最初は、フルートのソロ。

一人ぼっちの孤独さをあらわしているメロディーだ、とおねえちゃんは言っていた。

「涼太、フルートとサックスどっちが寂しく聞こえると思う?」

俺は、サックスはJAZZのイメージが強かったから、フルートを選んだ。

そのあとは、オーボエが入ってくる。

そして、温かく低音が入ってきてだんだんと重なっていく。

そしてトランペット、トロンボーンのクレッシェンド、シンバルの強い響き。

お姉ちゃんは上京して音大に通っている。

この曲は何年もかかった。と言っていた。

お姉ちゃんは、兄貴と協力して微調整をしていた。

兄貴はアマチュアの吹奏楽、オーケストラ団体を作っていた。

お姉ちゃんは兄貴に頼んで演奏してもらい、調整をした。

オーケストラ版、吹奏楽版。

両方が完成した。

そう・・・音楽は協力、支えあい、思いやりが大切だ。

ピッチをあわせあい、感情を豊かにし、みんなと一緒のものを作り上げていく。

誰か一人欠けていいわけではない。

全員がいるからこそ成り立つ。

俺はこんなことに惹かれた。

・・・なのに。

こんなむちゃくちゃな吹奏楽部員がいたなんて・・・

俺は、なんて世間知らずだったんだろう・・・

「涼太!」

そう呼んでくれるのは親だけになった。

みんな音楽系に進学して、俺は家でひとり。

お姉ちゃん、兄貴の音楽を聞けないで過ごしてきた。

・・・・はぁ。

俺も音楽やりたいな・・・

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