下田の空[短編]
第七章
式は、喪主挨拶の後、じきに終わった。
私はしびれる足をさすりつつ、外へ出た。瞬間、額に冷たい刺激を感じた。はっとして正面を向くと、美しい下田の港に幾筋もの斜線が入ったかのような、大粒の雨が降っていた。
私たちは僧侶からビニール傘を借り、それをさして永山家の墓へ向かった。
山をコンクリートで固めたような崖の上に、その墓はあった。雨に濡れた御影石のそれは、何かに呆然として佇んでいるようにも見えた。
私たちはそこで、先祖たちに線香を捧げた。行列を作り、皆先祖たちに、思い思いの報告をした。

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