下田の空[短編]

私たちは前の方にいた。親戚らは皆、歳をとり、足も悪くなっていたからだ。
もうもうと上がる線香の煙で息苦しくなりながら、私は眼を綴じ、手を合わせた。眼を開けると、早くもその墓は煙に包まれていた。私はなぜだかいたたまれなくなって、早足で皆の前を通り抜け、階段を降り、お堂の屋根の下へと舞い戻った。
しばし地面とにらめっこしてから、私は皆の方を見た。行列は遅々として進まず、お参りはまだ半分も終わっていなかった。
そこから見ると、ビニール傘をさした皆は、まるでクラゲのようだった。丘に行列を作るそれはゆらゆらと揺れながら、徐々に階段を昇って行く。その行列の先で上がるのろしのような煙が、曇りの空に紛れていった。