下田の空[短編]
多恵子さん、と紹介されたその女

性を一目見て、私は我が目を疑っ

た。彼女は亡くなった大叔母に瓜

二つだったからだ。そういえば少

し声も似ている気がした。私は再

び、恐る恐るお辞儀をして、目線

を切った。

祖母は六人もの兄弟を持っている

。しかも、全員女。なんでも血筋

的にも女が産まれやすい家系なの

だという。そんな訳で、男で、し

かも成績も優秀だった父は永山家

の期待の星だったそうだ。

「初めまして。佳奈美です」

私は顔を上げて挨拶した。顔だけ

を見ていると、大叔母がそこに居

るような錯覚に陥る。

「話は何度も雅博から聞いていた

わ。受験も近いのに悪かったわね



「とんでもないです」

思わず両義的な言葉を使ってしま

った。しかし多恵子さんは気にも

留めない様子だった。

「葉子さん、式は2時からだから

。お腹減っているでしょう?何か

食べていらっしゃい」

祖母が横から声を掛けてきた。私

たちはそれに従うことにした。

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