桜が散るその日
ずっと昔の恥ずかしい出来事を思い出した奏は、そのときの恥ずかしさも思い出して体中が熱くなった。じっともしていられなくて、今にでも布団の中に潜り込んで、その記憶を闇に葬り去りたい。
思い出すなんてどうにかしているとしか言えない。
「顔が赤いですね。熱が上がってしまったのでしょうか?風邪が悪化してはいけない。今、冷やすものを貰ってきますね」
慌てた様子で立ち上がろうとする桜田先生。どうやら、顔が赤くなったのを熱と勘違いしたようだ。区別がつかないなんて、本当にお医者様なのかと少し心の中で悪態をついた。お医者様だからの対応だろうとも思うが、勘違いされて苦い薬を飲ませられるのもいやだし、まるで奏が仮病を使っているみたいなのもいやだ。
「大丈夫です!」
もう立ち上がりかけている桜田先生の手を掴む。冷たくて気持ちいい。
すとんともう一度座り直した桜田先生は、じっと掴んでいる奏の手をじっと見る。風邪が悪化したわけではないのに、体温は上昇。
照れるというか、恥ずかしいというか、とにかく奏はいろいろと混乱していた。さっき思い出したこともだし、とっさに桜田先生の手を掴んだこともだし、その手をじっと見られることもだし。とにかく、風邪のせいかボーッとする頭では処理できなかった。
すっと手にもう片方の桜田先生の手が乗る。奏の手は桜田先生の両手に包み込まれたというわけで、逃げられなくなってしまった。確か、手首で脈を測るわけで、心臓がばくばく言っているのがわかってしまう。その恥ずかしさからまた熱が上がるわけで。いろいろと、悪循環している。
循環を止めたくても止める術を知らないし、簡単じゃないこともわかっている。
「手がこんなに熱いじゃないですか。やはり、冷やさなくてはいけませんよ」
「もう元気ですから、大丈夫ですよ!」
元気だということをわかってもらえるように、元気な笑顔を見せる。これで信じてくれるならありがたいのだけれど、そううまくいくものじゃない。
思い出すなんてどうにかしているとしか言えない。
「顔が赤いですね。熱が上がってしまったのでしょうか?風邪が悪化してはいけない。今、冷やすものを貰ってきますね」
慌てた様子で立ち上がろうとする桜田先生。どうやら、顔が赤くなったのを熱と勘違いしたようだ。区別がつかないなんて、本当にお医者様なのかと少し心の中で悪態をついた。お医者様だからの対応だろうとも思うが、勘違いされて苦い薬を飲ませられるのもいやだし、まるで奏が仮病を使っているみたいなのもいやだ。
「大丈夫です!」
もう立ち上がりかけている桜田先生の手を掴む。冷たくて気持ちいい。
すとんともう一度座り直した桜田先生は、じっと掴んでいる奏の手をじっと見る。風邪が悪化したわけではないのに、体温は上昇。
照れるというか、恥ずかしいというか、とにかく奏はいろいろと混乱していた。さっき思い出したこともだし、とっさに桜田先生の手を掴んだこともだし、その手をじっと見られることもだし。とにかく、風邪のせいかボーッとする頭では処理できなかった。
すっと手にもう片方の桜田先生の手が乗る。奏の手は桜田先生の両手に包み込まれたというわけで、逃げられなくなってしまった。確か、手首で脈を測るわけで、心臓がばくばく言っているのがわかってしまう。その恥ずかしさからまた熱が上がるわけで。いろいろと、悪循環している。
循環を止めたくても止める術を知らないし、簡単じゃないこともわかっている。
「手がこんなに熱いじゃないですか。やはり、冷やさなくてはいけませんよ」
「もう元気ですから、大丈夫ですよ!」
元気だということをわかってもらえるように、元気な笑顔を見せる。これで信じてくれるならありがたいのだけれど、そううまくいくものじゃない。