桜が散るその日
ふと、糸が震える音がした。これは、この前聞いたバイオリンという楽器の音ではないか?上品で素朴で柔らかい悲しいような音。
まるで何かに取り憑かれたかのように、奏はふらりと廊下から外に出た。靴をすら忘れていた。
さすが良家の屋敷というのか、庭は広くジャングルのようにたくさんの植物が植えてあった。大半を奏は何かを知らない。そして、確かこの先に待っているのは、屋敷と屋敷の境を示している薄い塀があったはず。
それでも、音の聞こえる方へと奏は歩を進めるだけ。
ぎこちないこの音に奏は、惹かれていた。まるで、見えない糸に絡め取られたように。
ついに、奏は塀のところまで歩いてきた。やはり、薄い壁が歩みを妨げる。それでも、どうにかそれを越えようと試行錯誤をする。塀を跳び越えようにも、高い上にほとんど寝たきりの奏には無理だった。それなら塀を叩き壊すことも考えたが、体力がない。
ついに考えが行き詰まった奏は、ふと植物に隠れるようにひっそりと存在している穴を見つけた。
植物をよけるのは容易かった。
しゃがみ込んで穴を覗く。隣の屋敷の庭につながっているのがわかる。足下にはまばらに薄桃色。散るには、まだ早いだろうに。
老朽化のせいであいてしまったのだろうか?その穴は、四つん這いで通り抜ければ背中にかなりの余裕のある穴だった。しかし、問題は横の幅だった。せっかくの着物に傷がつきそうなほどに狭かったと言うのが、奏の感想。しかし、実際はそんなの気にしなくていいぐらいの若干の余裕があった。
薄い塀をくぐり抜けた奏は、着物についた汚れを払う。まだ、バイオリンの音は響いていた。
まるで何かに取り憑かれたかのように、奏はふらりと廊下から外に出た。靴をすら忘れていた。
さすが良家の屋敷というのか、庭は広くジャングルのようにたくさんの植物が植えてあった。大半を奏は何かを知らない。そして、確かこの先に待っているのは、屋敷と屋敷の境を示している薄い塀があったはず。
それでも、音の聞こえる方へと奏は歩を進めるだけ。
ぎこちないこの音に奏は、惹かれていた。まるで、見えない糸に絡め取られたように。
ついに、奏は塀のところまで歩いてきた。やはり、薄い壁が歩みを妨げる。それでも、どうにかそれを越えようと試行錯誤をする。塀を跳び越えようにも、高い上にほとんど寝たきりの奏には無理だった。それなら塀を叩き壊すことも考えたが、体力がない。
ついに考えが行き詰まった奏は、ふと植物に隠れるようにひっそりと存在している穴を見つけた。
植物をよけるのは容易かった。
しゃがみ込んで穴を覗く。隣の屋敷の庭につながっているのがわかる。足下にはまばらに薄桃色。散るには、まだ早いだろうに。
老朽化のせいであいてしまったのだろうか?その穴は、四つん這いで通り抜ければ背中にかなりの余裕のある穴だった。しかし、問題は横の幅だった。せっかくの着物に傷がつきそうなほどに狭かったと言うのが、奏の感想。しかし、実際はそんなの気にしなくていいぐらいの若干の余裕があった。
薄い塀をくぐり抜けた奏は、着物についた汚れを払う。まだ、バイオリンの音は響いていた。