きっと私の身体はジェリービーンズでできている。
何となく口をつけられずにいると


そんな私を
猫が


ジッと見ていた


「コーヒーが嫌いなら言えばいいのに

そんなことも自分で言えないのか?」


冷ややかに言う猫に
思わずムッとして
言い返した


「ちがうよ
このマグカップ、私が使っていいの?
誰か…というか…
彼女の、じゃないの?」

勢いづいて言う私を見て

プッと噴出して
猫は笑った


「そんなことか
それ、前に女が勝手に置いてったやつ
だから気にしなくていい」


「女って」

余計気になるんですけど…


「知らない女
俺、特定の相手は決めないことにしてるから
あんまり名前とかも
聞かないし」


ジュッ

長い指でタバコに
火をつけた


「…そうなんだ」


そういえば
私の名前も聞かれたことがないことに

今気付いた


「きっと」


猫が言う


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