きっと私の身体はジェリービーンズでできている。
背広さんなら


言わない


「…貸してあげよっか」

「え?」


背広さんは
自分の胸を指差す


「…今だけ
離さない、なんて言わないよ
貸すだけだから」


背広さんの
優しい黒い瞳を
見つめると


我慢していた
涙が

徐々に
あふれ出す


「じゃあ、ちょっとだけ…
貸してください」



トン、ともたれると


大きな手が
私の髪をなでる


「…我慢しなくていい
泣いたら少し楽になるから」


背広さんの胸が
ほんのり温かくて


気付いたら
しゃくり上げて泣いていた


どれだけそうしていたのか

泣き疲れた私は
いつの間にか
眠ってしまって


自分の部屋に戻る頃には

深夜0時を
過ぎていた


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