きっと私の身体はジェリービーンズでできている。
あのヒトと
俺の関係は

一年程
ズルズルと続いたが


少しずつ変わりはじめていた


俺の中の違和感がうまれはじめたのは


あのヒトとの
セックスが
原因だったと思う


その頃の俺は
芸大への道が
推薦という形で決まり


努力とか必死だとか
全くの無縁で


何だかふわふわとしていていて


何事に対しても
真剣になれなかった


あのヒトをモデルに
絵は描き続けていたけど

肝心の顔がうまくいかず

ただ描けないことも
さほど問題には
感じていなかった


「ねぇ…ねぇってば…」

気付くと
上の空の俺の傍らで


あのヒトが肩を
揺さぶっている


「あぁ、ごめん。何?」


最近、こんなことが
多い気がする


「今度、2人で旅行に行かない?」


上目遣いに
あのヒトが言う


「旅行って…無理だろ
親父にバレるよ
いいの?」


そう言う俺の顔を見ていた
あのヒトの顔が



みるみるうちに
強張っていく


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