神様ごっこ
*嘘つきゴースト
───最悪だ。
さっきまで青かった空を覆った黒い雲から激しく降り注ぐ雨に打たれながら、ぬかるんだ地面を強く蹴って走りつづける。
雨に濡れて肌に張り付く制服が気持ち悪い。ローファーに溜まった水が買ったばかりの黒のハイソックスに染みて気持ち悪い。放課後寄った予約していた美容院でサラサラだった髪が雨で軋むし、顔に張り付くし、口に入るし、
「……あった!」
確かあったはず、という曖昧な記憶を頼りにして辿り着いた古い神社の鳥居をくぐって、すっかり埃の溜まった賽銭箱の隣で足を止めた。小さな神社の屋根では足元の石畳に水が反射して足元が濡れるが、ここまで濡れてしまえばどうでもいいと開き直れるものだ。
鞄の中からタオルを取り出して肌を拭きながら相変わらず重苦しくのしかかっている雲を見上げた。
あーでも、もうすぐ止むかも。と思った瞬間に空に走った雷と、数秒後に身体に響いた凄まじい雷鳴に、身体を拭く手がピタリと止まった。
雷は苦手だ。
泣き叫ぶ程ではないが、そうしたいくらいに恐怖が身体中を駆けずり回ってくる。
チラリと視界に入った引き戸。神聖な場所だかなんだかしらないが、生憎、神様とか仏様とか幽霊とかは一切信じていない。雷が見えなければ、後は耳を塞ぐだけでいいんだから、少し借りよう。
「よし、鍵掛かってない……っと」
少し建て付けが悪い引き戸を一気に開いてよじ登って中に入って閉めると、部屋は一気に暗くなる………筈だった。
確かに部屋は暗い。少し埃っぽい部屋には小さな鏡と、すっかり枯れた木の枝と、
「………」
「………」
青白く光る男がいた。