ただその一言が言えなくて…

原田 小海 15歳

夜は嫌い。


学校が終わって


皆で帰って



暗い路地裏を抜け


帰るのは


小汚ないスナック。


『広海』



紫色の看板に


黄色で書いている。




……下品。



深呼吸してドアを開ける。


酒臭さが漂う。


「お帰り。小海」


お母さんの前には


常連さんが3人。


ケン、という人が


「コウミちゃんもママに似て綺麗だね」


とか言う。


似てねーよ、


って思いながら


「…ごゆっくり」


と言った。



自分の部屋に入っても


聞こえる声と歌。




嫌でたまらない。


ここから


逃げたい。


死にたい。



毎日思ってた。




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