飛べない黒猫
部屋のドアを開けると、直哉はベッドに寝ころび本を読んでいた。


「ちょっといいか?」


岡田は勉強机の椅子に腰掛け、直哉を見た。

直哉は本を伏せて、耳に付けていたイヤホンを外し起き上がった。


「食事会の時だけど、頼みたい事があってね。」


直哉は怪訝な顔をする。


「挨拶とかは勘弁してよ、俺、そーゆーの苦手…」


「いや、そうじゃない。」


岡田は部屋の中をぐるりと見回す。
小さな人形が本棚や壁の飾り棚に並べられている。

アニメキャラクターのフィギアという物らしい。

これのどこが良いのか岡田には理解出来ない。


「青田家の連れ子…蓮に近づいて、どんなヤツか探ってくれないか?」


「…探る?」


「あぁ、いや、…どんな男なのか知っておきたいだろう?
食事会の席では、私は何かと忙しいし…。」


「それなら、美香にやらせればいい。
そいつの事、気に入っていたぜ…カッコイイって。」


「馬鹿な…美香は、まだ子供だ。
得体の知れない男が、親戚ってのも気になるだろう。
お前も青田建設の役員になる身だ、関係ない訳じゃない。
いいな?」


いつもそうだった。
こちらの意向など聞き入れてくれる父親ではない。

何を言ってみても無駄なのだ。


「…あぁ、わかったよ。」


直哉は渋々承諾した。
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