飛べない黒猫
そう言うと同時に、真央は両足のカカトを上げてスルッと靴を脱いだ
綺麗に刈り込まれた芝の上に、素足を置く。

椅子の下には、そろえて脱いだ靴がそのまま置かれていた。


「あらら、せっかく褒めたのに。」


蓮は笑った。


「みんな、無理しないでいいからねって言ってたよ。」


すまし顔の真央。


「そうだね、俺達2人は無理しないで楽しくやろう。
料理も運ばれてきたし…おっ、旨そうだ。
そろそろ、乾杯だよ。」


岡田が席を立ち、青田と洋子へ祝いの言葉をのべる。
賑わっていた会場が静かになった。

乾杯用の小さなグラスが、給仕によって配られ、皆、クラスを持ってその場に立った。


「あの…わたし、これ飲んでいいのかな?」


真央が蓮を見上げる。


「あ…どうなんだろう。
未成年だよな。
でも、乾杯だし、真央にも配られたんだから、いいんじゃないかな。
あぁ、あれだよ…正月の御神酒みたいなモンじゃない?」


「そっか、御神酒ね。」


「…って、真央!
素足のままかよ。」


「あっ…」


驚いて2人顔を見合わせる。
そしてクスクスと笑いあった。


“勝さん、洋子さん、お二人の前途を祝して乾杯っ…”
“かんぱーい”

まわりから声があがり、皆、一斉にグラスを掲げた。

蓮と真央は、そっと互いのグラスを当てた。
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