飛べない黒猫
甘い果実酒を飲み干して、テーブルに置く。
料理が運ばれ、あたりは急にガヤガヤと騒がしくなった。


「うわぁ、真央…全部飲んだの?」


真央も、カラになったグラスをテーブルに置く。


「乾杯の飲み物は、飲み干すのが礼儀なんだよ。
…なんかの本に書いてあったの、たしか。」


「まあ、そうだけどさ…
真央の場合は、口付けるだけでいいんだよ。
御神酒だってそうだろう?」


「御神酒は苦いけど。
このお酒は甘いから飲めるもん。」


少しテンションが上がってる…
早くも、酔いがまわっているのか?


「…はい、水飲んで。
気持ち悪くなったら、言うんだぞ。」


「ぜーんぜん平気。
大丈夫だもーん。」


…酔ってるし。


それでも真央は、渡された水をゴクゴク飲んんでから、おとなしく料理を食べ始めた。




蓮のテーブルは、青田と洋子と真央の4人となっているが、青田と洋子は他のテーブルに挨拶にまわっているので、ほとんど座っていない。


蓮は、心配そうにこっちを見つめている和野と目が合った。

真央は落ち着いている。
最近では、散歩したり買い物に行っても、発作を起こす事はない。

蓮はニコッと微笑んで大丈夫だと伝える。
和野はホッとした様子で、蓮に微笑み返した。


その時、背後から蓮を呼ぶ声が聞こえた。


「こんにちは、蓮さーん。」


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