飛べない黒猫
雨が続いている。
昨夜から降り始めてずっと。

夜中に何度か目が覚めて、その度にベッドを抜け出し下に降りて、ベランダの窓から外を見た。

でも、クロオの姿は無かった。


もう、丸2日になる。

今まで、こんな長い時間帰ってこない事なんてなかった。


お腹だって空いている筈なのに…
真央の心は、ざわざわと波打つ。


もしかしたら、帰りたくても帰れない状況なのかも知れない。
どこかで必死に鳴いて、真央を呼んでいるかも知れな。

そう思うと居ても立ってもいれず、結局、何も手につかずにベランダの窓ぎわでクロオの姿を探した。



「まだ、クロオ戻らないんだ…」


蓮は真央の背中に声をかけた。


「うん…」


真央は膝を抱えたまま、沈んだ声で答えた。


「そっか…
でも、そろそろ帰って来ると思うよ。
ネコって放浪癖あるからね、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。」


蓮は、わざと明るい声で話す。
だが本当のところ、蓮も心配していた。

野良猫と違い家猫は外の世界で過ごす事に馴れていない。

危険を回避する能力が鈍くなっていのだ。

どこかに閉じこめられてしまったり、他の猫と喧嘩して怪我を負ったり。
最悪、交通事故だって考えられる。


「ケロッとして戻ってくるよ、大丈夫!
それと、
今、美香ちゃんから電話あって…これから遊びに来るってさ。」


「…うん。」


浮かない返事。
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