飛べない黒猫
テーブルに今夜のメイン、ローストチキンが運ばれた。
鶏を丸ごとオーブンで焼いた、和野の自慢の一品である。
内臓が取り除かれた腹の中に香草、タマネギ、セロリ、人参、ジャガイモが詰め込まれていて、ハーブと塩コショウで飴色に焼き上がっていた。
洋子が歓声をあげ、チキンをそれぞれの皿に切り分けていると、突然、真央が席を立ってベランダへと歩き出した。
向かった先のガラス戸には、クロオの姿があった。
カシャカシャと、必死に前あしで戸をひっかき、開けるのを試みている。
「時々、外に出かけるんですよ。
散歩ですね、いつも2〜3時間で帰って来ます。
でも、冬は寒いせいでしょうか、ご帰宅も早くて。
30分くらいの時もあるのですが…
今日はゆっくりでしたね。」
青田は、ガラス戸を開けてクロオを抱き上げる真央を見ながら言った。
「何処へ行ってるんでしょうかねぇ…
結構、汚れて帰ってきます。
真央が、手足を洗って体を拭いてやってます。」
真央はクロオを抱えて居間を出て行った。
洗面台に向かったのだろう。
「…今、真央が着ているワンピース…私からのクリスマスプレゼントなんです。
スカートをはきたがらない子なんですがね、もう、年頃だ。
かわいい服も着て欲しいと思いまして、彼女の意に反したプレゼントだったのかもしれませんが…
贈ったんです。」
「とっても似合うわ。」
青田は満足そうに笑って洋子を見た。
「僕も、そう思います。
…女性らしく、大人っぽくなったなぁ、って。
今日、着てくれるとは思っていなかったので、ミニ・サプライズ…嬉しかった…」
「えぇ、お人形さんみたいに可愛い。」
洋子は胸に手をあてうっとりする。
「真央ちゃんは瞳の色が真っ黒で色白だから、原色が似合うの。
真っ赤とか、青とか…黄色なんかもいいわね。
あぁ、着せてみたいわ!
今度、あたし、勝手に買ってきちゃおうかしら。」
青田の表情が曇る。
痛みに堪えるかのように、そっと胸を押さえた。
鶏を丸ごとオーブンで焼いた、和野の自慢の一品である。
内臓が取り除かれた腹の中に香草、タマネギ、セロリ、人参、ジャガイモが詰め込まれていて、ハーブと塩コショウで飴色に焼き上がっていた。
洋子が歓声をあげ、チキンをそれぞれの皿に切り分けていると、突然、真央が席を立ってベランダへと歩き出した。
向かった先のガラス戸には、クロオの姿があった。
カシャカシャと、必死に前あしで戸をひっかき、開けるのを試みている。
「時々、外に出かけるんですよ。
散歩ですね、いつも2〜3時間で帰って来ます。
でも、冬は寒いせいでしょうか、ご帰宅も早くて。
30分くらいの時もあるのですが…
今日はゆっくりでしたね。」
青田は、ガラス戸を開けてクロオを抱き上げる真央を見ながら言った。
「何処へ行ってるんでしょうかねぇ…
結構、汚れて帰ってきます。
真央が、手足を洗って体を拭いてやってます。」
真央はクロオを抱えて居間を出て行った。
洗面台に向かったのだろう。
「…今、真央が着ているワンピース…私からのクリスマスプレゼントなんです。
スカートをはきたがらない子なんですがね、もう、年頃だ。
かわいい服も着て欲しいと思いまして、彼女の意に反したプレゼントだったのかもしれませんが…
贈ったんです。」
「とっても似合うわ。」
青田は満足そうに笑って洋子を見た。
「僕も、そう思います。
…女性らしく、大人っぽくなったなぁ、って。
今日、着てくれるとは思っていなかったので、ミニ・サプライズ…嬉しかった…」
「えぇ、お人形さんみたいに可愛い。」
洋子は胸に手をあてうっとりする。
「真央ちゃんは瞳の色が真っ黒で色白だから、原色が似合うの。
真っ赤とか、青とか…黄色なんかもいいわね。
あぁ、着せてみたいわ!
今度、あたし、勝手に買ってきちゃおうかしら。」
青田の表情が曇る。
痛みに堪えるかのように、そっと胸を押さえた。