飛べない黒猫
真央は、黒のボーダーネックに、洋子からプレゼントされた赤地にグレーと黄色のタータンチェックのミニスカート姿。

胸にはいつものムーンストーンのペンダントが揺れる。


「…まじ、キュート。
母さん、泣いて喜ぶわ。」


真央は小首をかしげて笑う。

始めて会った日から、まだ数週間しか経っていない筈なのに、あどけない少女は魅力的な女子へと変わる。

女の子の成長とは、こんなにも、めざましいものなのか。


「真央ちゃんが言うとおり、あいつら、なかなか意地悪そうだな。
挨拶して、お茶飲んだら、サッサと引っ込もうぜ。
俺も、あの手の方々は苦手だ。」


真央はクスッと笑って小さくうなずき、蓮の後に付いて階段を降りた。


居間に行くと、岡田が息子の自慢話をしているところだった。
青田も同調し、賛辞をおくる。


「優秀な息子を持って、鼻が高いですね…。
将来が楽しみでしょう?」


「えぇ、そうなんです…。
それで、義兄さん、是非、息子を会社に…」


岡田が姿勢を正して、勢いづいて話し出した時、青田は真央に気がつき「あっ!」と、声をあげた。


「話の途中で…申し訳ない、ウチの姫のお出ましです。」


青田が立ち上がり、真央の背中に手を添える。

真央は、恥ずかしそうに少し微笑み丁寧にお辞儀をした。


青田は赤いスカートを見て、洋子に視線を移す。
キッチンから顔を出した洋子は、両手を頬にあて目を丸くした後に、満面の笑みで、青田を見てうなずいた。


「まぁ…真央ちゃん。
大きくなったわね…。
顔色も良くて、元気そう。
良かったわ、心配してたのよ。」


華江が親しみを滲ませ、しかし、少し悲しげに笑った。

母親に似てきた真央の顔を見て、悲惨な死を遂げた姉を思い出しているのだろう。

それとは対象的に、岡田と子供達は無表情に真央を見つめているだけだった。

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